砂手紙のなりゆきブログ

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彷徨老人の話とソクラテス

 これはミルチャ・エリアーデというルーマニア宗教学者(というか、日本では作家としても有名な人)が、その先生から聞いた話を、丸谷才一が書いているものです。要するにぼくのテキストは曾孫引きぐらい。
 エリアーデの先生がテオドール・モムゼンという歴史学者(19世紀後半に著名だった歴史学者)の講義を聴講したときのことです。
 モムゼンはスラスラと前5世紀のアテナイの地図を書き、アクロポリスやアゴラ、そして『パイドロス』に出てくるイリソス川はこれで、ここにあったプラタナスの木の下で、ソクラテスとパイドロスは腰をおろした、と語りました。
 その博識と熱弁に圧倒されたエリアーデの先生ですが、どうもモムゼンのそばに従僕がいて、挙動がおかしい。
 あとで聞いてみるとモムゼン師、自分の家がどこにあるかわからなくなっているので、その従僕が大学との道の道案内をしてくれてるらしいんですね。
 丸谷才一が引用した話はここまでなんですが、気になるのは「ソクラテスはパイドロスと会話して別れたあと、ちゃんと自分の家に帰れたんだろうか」ということです。
 このときソクラテスは60代で、ふたりが出会うのは道端で、パイドロスがリュシアスの家を出たところにたまたま出会います。
 でもこの会話はプラトンが残しているんだから、きっと彼がソクラテスを送っていったんでしょう。
 岩波文庫に入っているみたいなので読んでみます。
 今の彷徨老人にはそういう人がいないのでいろいろ難儀です。

 本日は622文字です。