「私のことを書かないで」という小説
この小説の中で作者は、自分の10歳の娘について語ります。性格や学校でのできごと、クラスの友だちのこと、そして彼自身の職業と秘密のことなど。
最後のオチはそれらを書いている作家のところに、娘が入って来てこう言う、というものです。
「お父さん、私のことを書かないで」
しかしその小説を書いているのは実は成人した娘で、彼女が10歳のときに父親は事故で亡くなっています。
そして別のオチになります。
『今はもう父がいないので、どんなことを書いてもかまわない。』
するとそこへ父親がやってきて、俺は死んでない、作家だから何を書いてもいいというもんじゃない、と、作家である娘に苦情を言います。
「俺の話を書くなら、俺が死んでからにしてくれ」
ところが実は娘は10歳のときに事故で死んでいて、娘が作家になったというのは、作家である父親の想像。
ところが実は父親も娘も、この小説を書いた作者の想像。
ところが実はこの小説を書いた作者というのも、作者の想像。
…このようにややこしい小説は、多分書いてはいけないんじゃないかと思う。
本日は460文字です。
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