砂手紙のなりゆきブログ

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校正とは別の面倒くささを山本弘『翼を持つ少女』(創元推理文庫)で考える

 山本弘『翼を持つ少女 上』(2016年4月28日発行)は、冒頭に「ビブリオバトル公式ルール」の「ルールの補足」として、以下のようなテキストがあります。

『4 全発表参加者に紹介された本の中で「どの本を一番読みたくなったか?」を基準に参加者全員で投票を行い最多票を集めたものを『チャンプ本』として決定する。』

 2016年11月の時点での、「ビブリオバトル公式ルール」の「公式ルールの詳細」は、以下のようになっています。

『4 全ての発表が終了した後に「どの本が一番読みたくなったか?」を基準とした投票を参加者全員一票で行い,最多票を集めたものを『チャンプ本』とする.』

 ずいぶん違います。

 さらに「ルールの補足」ではなく「公式ルールの詳細」になっています。
 実は、公式ルールは以下の通り改訂されています。

改訂 2014年11月7日(理事会決議)※ルールの補足のみ
改訂 2015年1月17日(理事会決議)※ルールの補足のみ
改訂 2016年2月21日(文言修正)※ルールの補足のみ
改訂 2016年8月8日(理事会決議)※ルールの補足を公式ルールの詳細と改称

 どの部分がどう改訂されているのかは、法律の文章じゃないのでよくわからない。
 ぼくに想像できるのは、かつて「全発表参加者に紹介された本の中で」云々のテキストが存在し、小説の中では多分それが正しいテキストだったんだろうなあ、ということです。
 これに関しては、以下の方法があります。

ビブリオバトルのルール」に関するテキストは、○年○月○日のものに準拠してます」とあとがきで注記として明記する

 まあ実は山本弘のこのシリーズは、今より少し前(2014年)の話なので、現在の公式のルールがどうであろうと特に問題はないのです。
 ただ、そうするとたとえば、「2014年9月6日」の天気・気温が気になるわけです。
 小説『BISビブリオバトル部 君の知らない方程式』の、ネットのテキストの中ではこう書かれています。

『九月の太陽の下、緑の芝生に覆われ、抽象的な銀色のモニュメントがそそり立つ広い敷地を、俺たちは黙々と横切って行った。すでに季節は秋だが、空気にはまだ夏の熱気がかすかに漂っている。』

 当日の天気と温度に関しては、tenki.jpのサイトでは以下のように書かれています。

『九州から関東に前線が延び、広く大気の状態が不安定に。九州から近畿は昼過ぎから雨雲が発達。滋賀県甲賀市付近で約100ミリの記録的短時間大雨。東海と関東も夕方から所々で激しい雨。真夏日地点は308と2週間ぶりに300地点超え。東京都心は6日朝にかけて久々に熱帯夜。』『最高気温31.1℃ 最低気温26.1℃』

 このことから考えると、登場人物たちは、「はっきりしない天気の下」「空気には昨夜の熱帯夜の余韻が残っている」みたいな感じなんでしょうが…そんなの気にするのは東京創元社の校正・校閲者とぼくぐらいなものです。