砂手紙のなりゆきブログ

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ぼくが見たいのは映画の話ではなくどういう角度から撮るかという演出

 3人の悪者(詐欺師)がいます。男性がふたりで女性がひとり。
 女性がコーヒーを入れてカウンターのところにふたつ置きます。
 コーヒーがアップになるとその奥のドアが開いて、男Aが入ってきて言います。
「次の獲物が見つかりましたよ。利権で儲けている現役代議士です」
 と、言いながら、男Aはコーヒーを飲み(ここでカメラはウエストショットになり)、もうひとつのコーヒーを皿とともに手に持って右から左に歩きます。それにあわせてカメラが移動すると、奥のソファに男Bがいて、このようなことを言います。
「そいつはいいな。どうせ相手も悪いことをやって手に入れた金だ」
 男Aは男Bが座っている向かいのソファまで行き、カメラは男Bに近づき、その前のテーブルにコーヒーが置かれ、男Bは段取りについて話しながら、コーヒーを口にします。
「それはいい考えですね、Bさん」と男Aは言い、男Bから見た視点になります。
 でもって、ここまでが全部ワンカット。カメラの切り返しという安い手を使わない。
 こういうことが可能になるためには、段取り(リハーサル)と、カメラのライン(動線)および照明の緻密な計算が必要になります。
 そういうのがめちゃくちゃうまかった(悪く言えば素人にもわかる技巧に走っていた)人としては、スタンリー・キューブリックが知られていますが、ぼくが例に挙げたのとほぼ同じ映像はテレビドラマ『借王<シャッキング>-銭の達人-』(2009年)で見ることができます。監督の名前は香月秀之という人です。