砂手紙のなりゆきブログ

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「と」「りと」が多すぎる文章(神隠しの森)

 集英社オレンジ文庫『神隠しの森』(梨沙、2016年)は、ジャンル的に普通の小説とライトノベルの中間ぐらいに位置するライト文芸的な物語で、田舎を舞台にしたホラー、と言えばいいんですかね。
 内容的には特にどうということはないんですが、文章がものすごく個人的にひっかかって困った。具体的には「と」「りと」が多すぎてすごく読みにくい。
 小説の冒頭、第一章「聞こえない声」の2ページ分から拾ってみます。

『ひっそり【と】横たわる荒魂村
どっしり【と】した古い日本家屋
青々【と】葉を揺らす田畑
雑草をせっせ【と】刈っていた
黒縁眼鏡をきらり【と】光らせる
甘い果汁がぽたぽた【と】
ぷっ【と】種を吐き出す』

 …どんなもんですかね。
 人にはある程度書きグセというものがあって、たとえば自分なら「という」「ちょっと(少し)」という語がちょっと(少し)多めだと思うんですが、そういうのって言われないとなかなかわからない(気づかない)ものなんですよね。
 多少の書きグセなら、読んでて引っかかることはない自分でも、これはもう、自分の感性が全力で、これ苦手、と叫んでしまうのでどうにもこうにも。
 なお、編集者はそういうのに口をはさむなんてことはめったにありません。
 そりゃもう、ねぇ、古今亭志ん朝がいくら「ねぇ」って話グセを入れても、席亭が(多分)何も言わないのと似たようなもの。
 口をはさめるのは「師匠」ぐらいなんだけど、だいたいは小説家に師匠はいない。新人賞でデビューした人だと、最初の編集者とか、新人賞審査委員の先輩作家とかはいるかな。
 ああ、読者は適当なことを適当な場所で言えるんだっけか。

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