砂手紙のなりゆきブログ

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フレーム外の声は神の声(フライト)

(今回はタイトル作品のネタバレになっている部分もあるのでご留意ください)
 映画『フライト』(2012年)は、アルコール依存症でヤク中の飛行機のパイロットであるウィップ・ウィトカー機長(デンゼル・ワシントン)が、コントロール不能状態に陥った飛行機をなんとか不時着させて乗客・乗員102名のうち96名を救い、英雄になるのですが、操縦時の状態が事故の調査委員会に問題になりそうなところをあれこれするんですが、ドストエフスキー罪と罰』(1866年)なみに神と罪について考えさせられる名作です。
 デンゼル・ワシントンの迫真の演技と、単純ながら考えつくされた脚本が素晴らしい映画で、問題はタイトルがいまいち見る気にならないところです。結局監督と役者の名前で見た(他の要素では見なかった)人多かったんじゃないかな。
 映画では「フレーム(映画の画面)外からの声」が効果的に使われるものもあります。この映画では、アルコール依存症の人によるスピーチを聞く主人公が、だんだん居心地悪くなるショットと、助かったけどもう二度と空を飛べなくなった副機長が「これも神の定め」と主人公に話すシーンです。

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 こういう、「話を聞く」という演技をどれだけリアルに出せるか、は、映画を見ていていつも気になるところなんですが、デンゼル・ワシントンには、見ている人にほどほどの緊張感を与えるのに成功して、この話はどういう方向に進むのか、の隠れた指針になっています。