砂手紙のなりゆきブログ

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2015-04-01から1ヶ月間の記事一覧

『ハケンアニメ!』第一章の話はイクニ監督っぽいなと思ったらあとがきに書いてあった

小説『ハケンアニメ!』(2014年、辻村深月)を読んでます。アニメ業界を題材にした、働く女性の連作短編みたいなもので、第一章では伝説の名作を作ったけど、その後いろいろやらかしてなかなか監督をやらせてもらえないイケメン監督と、その作品をプロデュ…

「…という話はどうかな」という映画の問題点(お小夜恋姿)

画家の内田良一は巨匠の父を持つ屈折した男で絵の修行中。母親は英才教育を強いるが、良一は美人のモデルである町子となさぬ仲になり、結婚を決意する。ところが田舎の温泉では彼の許嫁である旅館の娘・お小夜がいて、彼が立派な画家になって求婚して来るの…

『荒野の用心棒』(1964年)と『ダーティハリー』(1971年)で聞こえる謎の余分な銃声音

(今回はタイトル作品のネタバレになっている部分もあるのでご留意ください) 映画『荒野の用心棒』(1964年)は、最後の決闘シーンがめちゃくちゃかっこいい映画です。 拳銃ではライフルに勝てないということで、体(心臓部分)に鉄板を置いて、敵のライフ…

西部劇映画の音楽はカントリー・ミュージックなんかじゃないし西部劇時代の音楽とも違う(ディミトリ・ティオムキン)

カントリー・ミュージックは1920年代に生まれ、1950年代にわたって進化して、ロカビリーというジャンルになって今でも続いていますが、日本ではロックほどには定着していないようです。 映画における西部劇音楽というとディミトリ・ティオムキンという人なん…

クリント・イーストウッドが坂道のぼるときに後押ししてくれた謎の女性(ソニア・チャーナス)

クリント・イーストウッドが有名になるのはテレビの西部劇『ローハイド』(1959~1965年)の準主役に抜擢されたのがきっかけですが、その際に働いてくれたのが三流映画監督アーサー・ルービンのために脚本選びをしていてクリント・イーストウッドと顔なじみ…

東横映画(のちの東映)と五島慶太の発言

東横映画はもともと五島慶太が渋谷を中心にした映画館経営のために創立した会社ですが、戦後満州映画から来た人たち(主にマキノ光雄)にうまいこと言われて映画製作会社になりました。 映画『日本戦歿学生の手記 きけ、わだつみの声』(1950年)を見た五島…

岡田茂(元東映社長)と小学校のころからの同級生なのにあまり目立っていない気がする今田智憲

あまりアニメの歴史なんて本格的に調べたりしてないんですが、どうもこの今田智憲(いまだちあき)という人が気になります。元東映動画社長。 彼は岡田茂の幼なじみで、東映の前身である東横映画に入社するよう岡田茂を誘った人で、彼と当時の東横映画社長だ…

ゆるく募集・物語全体が「主人公の見ていた夢だった」でも問題ないアニメ

そういうのの代表作は『けいおん!』(2009年)がありますね。 あの話は、新しい高校での新学期がはじまって数日目、いつものようにうたた寝してた平沢唯が見ていた夢で、真鍋和が生徒会に行く前に起こされます。 他の3人は実在していて、「放課後ファイト…

クリント・イーストウッドの黒歴史時代と黒澤明

クリント・イーストウッドのあまり知られていない特技に水泳とピアノがあります。あと歌と踊り(歌はレコード1枚、勢いで出してみたけど2枚めの話は丁重にお断りしたそうです)。それに映写技師。 朝鮮戦争のさなかの1951年春、軍隊に入ったクリント・イー…

十代目金原亭馬生はもう少し評価されてしかるべき(柳田角之進)

十代目金原亭馬生は名人と言われた五代目古今亭志ん生の息子で、三代目古今亭志ん朝の兄にあたる人です。 志ん朝も63歳と今の時代では早死ですが、馬生はそれより10年早い54歳、1982年に亡くなりました。志ん朝が亡くなったのは2001年なので、けっこう頑張っ…

短篇は小さな銃の弾丸で、小さな惑星を一周して自分の後頭部に当たる

長い小説は太陽の周りを回るような感じでゆっくりと読みますが、短篇作家は目のところにライフルをかまえた人で、そこから出る弾が十分に早くて、その人が立っている惑星が十分に小さくて、空気抵抗のようなものがないと、自由落下して作家の後頭部に当たる…

吸血鬼ドラキュラのファッションと変身

ブラム・ストーカーの『ドラキュラ』(1897年)は、当時イギリス演劇界の大物だったヘンリー・アーヴィングのために書かれ、容姿もアーヴィングを思わせるものになっており、実際に彼によって戯曲として上演されました。その後ふたりはふとしたことで仲が悪…

カメラマンのゴードン・ウィリスが自信のない役者を撮る方法

コードン・ウィリスはアメリカ東海岸に活動の拠点を置いていた撮影監督(カメラマン)で、ハリウッドには「赤信号でも右折(日本の場合は左折)できるだけがメリットの町なんて」と言って、そちら方面の人に愛想よくしなかったのでアカデミー賞はノミネート…

リアル背景とアニメの問題(ヤマノススメ)

最近のアニメにおける背景は、キャラクターの漫画的記号と比べると妙にリアルに準じているので、たとえば『ふたりはミルキィホームズ』(2013年)では、非リアルな話をほぼリアルな横浜の背景でやっているので少し混乱します。 しかし中にはリアルでなければ…

1933年の小津安二郎の心意気

キネマ旬報の1933年1月11日号で、映画評論家岸松雄のインタビューに対し小津安二郎は以下のように答えています。「やはり監督である以上、年に六作はつくりたいです。六本ぐらいつくらないのでは、勉強になりませんからね」「毎年一本ずつぐらい、会社員物を…

LPレコードとビートルズ(サージェント・ペパーズ)

昔、音を売るソフトとしてLPレコードというものがありました。 第二次大戦後に実用化され、1980年代にCDが出回るようになってから急速に廃れたので、だいたい30~40年ぐらいであまり一般的なものではなくなりましたが、サイズが30センチという大きなもの…

石原裕次郎は年下の男の子キャラ

キャンディーズ「年下の男の子」(1975年)は作詞家の千家和也が石原裕次郎をイメージして作りました。 というのは嘘ですが、千家和也は1944年生まれなので、多分年下の男の子キャラだったころの石原裕次郎を知ってるはず。 具体的にはボタンの取れてるポケ…

ピアニスト映画と馬映画で気になるところ(グランドピアノ)

ピアノを弾く人と馬に乗る人がでてくる映画では、どうしても「この人はある程度ピアノが弾けるのか」「馬に乗れるのか」ということが気になります。 エリザベス・テイラーは『緑園の天使』(1944年)を見る限りでは、少しは馬に乗れるみたいだけど、レースな…

長谷川町子とふたつの出版社

長谷川町子は志賀直哉の『赤西蠣太』を読んで福岡の浜辺を散策しながら、小説の登場人物「小江(さざえ)」(映画でも小説でも非常に重要な女中ですが、映画では「小波(さざなみ)」になっています)にヒントを得て、海産物が人の名前になっている4コマ漫…

アニメ『のんのんびより』OPに感じる妙なグルーヴ感

アニメ『のんのんびより』(2013年)は田舎に住む少女たち(主に4人)を描いた日常系アニメで、そのオープニングは見るたびにいつも妙な気持ちになります。 曲そのものはありがちの展開なんですが、アニメの絵の見せかたと微妙にずれてるんですね。いや、ず…

来年の春までにペリー・ローダンを全巻読もうかな、とか思ったらけっこう大変そうなのだった

宇宙英雄ペリー・ローダンのシリーズは早川文庫SFで現在毎月2冊出ていて、一つの本の中に2つ話が入っていて、もうじき(この日記を書いてる時点では)翻訳が500巻、話数としては1000話になろうとしている、世界最長のSFシリーズで、二階堂黎人が毎年ミ…

今も昔も大学の新入生は数年前のことしか知らないしゼロ年代の映画なんて多分映画館では見ていない

岩波書店の雑誌「図書」2015年4月号では、池澤夏樹が仙台の女子大学で3・4年生を教えていて、映画の『シックス・センス』(1999年)のネタが通じない、と困惑してました。 さらに向田邦子を知らないことには唖然(科目が創作表現研究、という、小説を知ら…

猫は何のメタファーなのか(赤西蠣太)

最近はいろいろ疲れるので、1930年代の映画、それも日本映画を見ています。このころの映画は無声映画からトーキーへどんどん切り替わっていっているわけですが、無声映画的なわかりやすい人物造形・行動描写が残っていて、あまりセリフに集中しなくても、キ…