砂手紙のなりゆきブログ

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舞台と映画空間の融合(シカゴ)

 映画『シカゴ』(2003年)は、アカデミー賞作品賞を取ったミュージカル映画としては『オリバー!』(1968年)以来ということになっていますが、ほぼ毎年ミュージカル映画っぽいものはノミネートされていて、この映画の劇場版演出を手がけたボブ・フォッシーも映画『キャバレー』(1972年)でアカデミー監督賞を受賞しています。ミュージカル映画と音楽映画の違いはあいまいで、とりあえず「歌と踊りがある(歌ってるだけのものはだめ)」ということにしておきます。
 ボブ・フォッシーはミラーボールと下着衣装を映画に持ち込み、下品や悪趣味なものを美に変えたキャンプな演出家・映画監督としてさまざまな人に模倣されました。マドンナとかですね。
 映画『シカゴ』は1920年代のシカゴにおける、音楽と犯罪となんか変なものを題材にしている映画で、物語の進行の中にステージみたいなものを組み合わせてて、ものすごく不思議で楽しくて、見てはいけないものを見ている気になる割に、話としても面白いという、21世紀っぽい映画です。
 21世紀っぽい映画を理解しうる観客に向けて作られてる映画って言うのかな。ビデオ・クリップみたいにものすごくカットを刻む映画演出に慣れてないと、つまり1980年代以降の映画を映画の原体験として知っている人でないと楽しめない、みたいな。
 最近はミュージカルの初期作品などを見てるんですが、こういう映画が作れるようになるには、機材の技術的な進化も重要だなあ、とか思いました。
 21世紀の映画は本当に刻みすぎてて、個人的にはアメリカン・ニューシネマ時代ぐらいのが一番楽しめるんですが(要するにスピルバーグ以前)、1970年代の映画は『ある愛の詩』(1970年)が傑作に思えてしまえるぐらい不毛な時代なんで、あまり今の人におすすめできる映画がないのが困りもの。