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砂手紙のなりゆきブログ

KindleDPで本を出しました。Kindleが読めるデバイスで「砂手紙」を検索してください。過去テキストの一覧はこちら→http://d.hatena.ne.jp/sandletter/20120201/p1

壁抜け撮影法に意味はあるのかどうか(ロック・ミー・ハムレット!)

 三谷幸喜和田誠の、映画に関するていねいな対談本『これもまた別の話』(1999年、キネマ旬報社)の中で、ふたりは映画『カサブランカ』(1942年)のあるショットについて言及しています。p363-364

三谷「リックが事務所に入って来るところ、ワンカットで撮ってますよね。あれは、カメラが壁をすり抜けてるのか、そういう作りの家なのかがよく分からなかったんですけど」
和田「人物がドアを抜けて部屋に入る。こちらから撮ってるから当然人物は壁の向こうに見えなくなるはずなんだけど、カメラが移動するとそのまま部屋に入っちゃう。セットじゃなきゃできない。昔よくあったやり方です」
三谷「今はあまり見ないですね、こういうの」
和田「僕は「麻雀放浪記」で一回やりましたよ」
三谷「どういう効果があるんですか」
和田「……特にないんだけど(笑)」

 確かに気がつかなかったけれど、昔はそういう映画あった気がするなあ。
 最近だと、『ロック・ミー・ハムレット!』(2008年)で使われてました。
 演劇の練習する場を奪われたダメ先生とその生徒が、体育館を利用するときに、カメラが先生の動きにあわせて外から入口の壁を通って、建物の中に入るの。
 でもそのあと、先生は体育館は使用禁止だ、ってことで鍵をかけられちゃって入れなくなるんだよね。
 だったら、カメラが通ったところを使って入れよ、と思うんだけど、これはコメディ映画ではあってもマルクス兄弟的ナンセンス・メタ映画ではないので、そんなことはしない。

「と」「りと」が多すぎる文章(神隠しの森)

 集英社オレンジ文庫『神隠しの森』(梨沙、2016年)は、ジャンル的に普通の小説とライトノベルの中間ぐらいに位置するライト文芸的な物語で、田舎を舞台にしたホラー、と言えばいいんですかね。
 内容的には特にどうということはないんですが、文章がものすごく個人的にひっかかって困った。具体的には「と」「りと」が多すぎてすごく読みにくい。
 小説の冒頭、第一章「聞こえない声」の2ページ分から拾ってみます。

『ひっそり【と】横たわる荒魂村
どっしり【と】した古い日本家屋
青々【と】葉を揺らす田畑
雑草をせっせ【と】刈っていた
黒縁眼鏡をきらり【と】光らせる
甘い果汁がぽたぽた【と】
ぷっ【と】種を吐き出す』

 …どんなもんですかね。
 人にはある程度書きグセというものがあって、たとえば自分なら「という」「ちょっと(少し)」という語がちょっと(少し)多めだと思うんですが、そういうのって言われないとなかなかわからない(気づかない)ものなんですよね。
 多少の書きグセなら、読んでて引っかかることはない自分でも、これはもう、自分の感性が全力で、これ苦手、と叫んでしまうのでどうにもこうにも。
 なお、編集者はそういうのに口をはさむなんてことはめったにありません。
 そりゃもう、ねぇ、古今亭志ん朝がいくら「ねぇ」って話グセを入れても、席亭が(多分)何も言わないのと似たようなもの。
 口をはさめるのは「師匠」ぐらいなんだけど、だいたいは小説家に師匠はいない。新人賞でデビューした人だと、最初の編集者とか、新人賞審査委員の先輩作家とかはいるかな。
 ああ、読者は適当なことを適当な場所で言えるんだっけか。

関連記事:

sandletter.hatenablog.com

金・銀・銅の英語と日本語の対応

 翻訳的にはこうなっています。

金(きん)=gold(ゴールド)
銀(ぎん)=silver(シルバー)
銅(どう)=copper(カッパー)

 英語に対応する(音を合わせる)と、こうなります。

黄金(こがね)=gold(ゴールド)
白銀(しろがね)=silver(シルバー)
赤金(あかがね)=copper(カッパー)

 これだと「こ」と「ゴ」、「し」と「シ」、「か」と「カ」が合います。
 ただ、このように翻訳すると、あまりにも詩的になりすぎてどうにもうまくない。普通に金・銀・銅で問題ないです。
 デ・ラ・メアの詩「Silver」だったら多分そう訳すんだろうな。

Slowly, silently, now the moon
Walks the night in her silver shoon;

そっと、静かに、月がいま
しろがねの靴で歩く夜半(よわ)

 うまくいかないけど、一応音韻を合わせてみる。
 この冒頭は「s」の音が効果的に使われているんだけど、最初の「スローリィ」からうまく訳せないのよね。

レイモンド・チャンドラー『ロング・グッドバイ』の冒頭はどう訳す?

 英語テキストはこんな感じです。

The first time I laid eyes on Terry Lennox he was drunk in a Rolls-Royce Silver Wraith outside the terrace of The Dancers.

 はい、もういきなり、「ロールス・ロイス・シルヴァーレイス」がわからないですね。今はウィキペディアその他でどんな車なのか画像で確認できます。映画の『ロング・グッドバイ』(1973年)では、時代背景が1970年代っぽいので少しレトロな車として見ることができますが、『ゴッドファーザー』(1972年)ではマフィアの車として、自由の女神像を背景に男が殺される場面で、非レトロ的に扱われています。

 清水俊二はこう訳しています。

『私がはじめてテリー・レノックスに会ったとき、彼は〈ダンサーズ〉のテラスの前のロールス・ロイス”シルヴァー・レイス”のなかで酔いつぶれていた。』

 村上春樹はこう訳しています。

『テリー・レノックスとの最初の出会いは、〈ダンサーズ〉のテラスの外だった。ロールズロイス・シルバー・レイスの車中で、彼は酔いつぶれていた。』

 自分だったらこんな感じ。

『はじめておれがテリー・レノックスを見かけたとき、あいつは飲みだおれてダンサーズのテラスの外、ロールス・ロイス・シルヴァーレイスの中にいた。』

 つまり、「はじめて」の「て」と、「The first time」の「t」が合うようにする。「he」は「イ」があるので、「あいつ」と訳したい。「he was drunk」だから、「あいつ」の「イ」、「飲みだおれて」の「ダ」を入れたい。
 面倒くさいでしょ。
 とにかく、冒頭は「はじめて」にしたいんだよなあ。

「I wish you are fear.」はどう訳す

 これはスティーヴン・キングの小説『シャイニング』(1977年)に出てくるフレーズで、日本語訳はどうなってたかな(あとで調べて追記します)。
 オリジナルはピンク・フロイドの『炎~あなたがここにいてほしい』(原題:Wish You Were Here)(1975年)ですかね。もっと古いのかと思ったら、今となっては同じぐらいに古かった。
 要するに英語の「h」と「f」を打ち間違えるとそうなる。
 でも普通、そのふたつって打ち間違えませんよね。「h」と間違えるのは「j」です。
 これはうまく日本語に直せない。意味が通じればいいんだから、「あなたが怖がってくれるといいんだけど」でも全然問題はない。
 まあ「ヒア」と「フィア」だから、「ア」の音があればいいのかな。「怖い」にはあるんだけど、「ここに」にはない。

あなたがいたらいいんだけど

 と訳すと、「ア」の音が「いたら」のところで入る(疑似的ですが)。
 そこから考えるとこうなります。

あなたがいたたいいんだけど

 で、実は日本語のローマ字入力では「r」と「t」は打ち間違える可能性がある場所にあります。
 つまり「itara」が「itata」になっても無理はない。

「スカボロー・フェア」の歌詞の合わせかた

 その前に、サイモン&ガーファンクルの「サウンド・オブ・サイレンス」について。
 これは「沈黙の音」ですね。「サイレンス」の「イ」と「ちんもく」の「ち」、「サウンド」の「ド」と「おと」の「お」が対応してる。「静寂の音」「静けさの音」でも合う。

 で、ちょっと英語の「スカボロー・フェア」を引用します。

Are you going to Scarborough Fair
Parsley, sage, rosemary and thyme
Remember me to one who lives there
She once was a true love of mine

 これをこう訳します。

きみは行くの スカボロー・フェア
パセリ、セージ、ローズマリーとタイム
伝えてよ そこに住む
昔好きだった人に

 すると、「アー・ユー・ゴーイング・トゥ」の「ア」と「きみは」の「は」、「ゴ」および「トゥ」と「行くの」の「の」が合います。
 同じように「リメンバー」の「メ」と「伝えて」の「え」、「シー」の「シ」と「昔」の「し」、「トゥルー」の「ト」と「だった」の「た」が合います。
 おまけに、ちゃんと歌えます。
 こんなことを考えてるともう、普通の英語テキストでも1行日本語にしようと思ったら30分ぐらいかかる。

色の名前を英語と日本語で合わせる

 だんだん難しくなるわけですが。
 まず、
緑(みどり)=green
黄色(きいろ)=yellow
 と、このふたつは「り」「r」、「ろ」「lo」があるのでだいたい合わせられる。rとlは違いますけど、気にしない。
 肝心の、
赤(あか)=red
青(あお)=blue
 が合わないんだよね。
 幸いなことに、今は印刷用語を中心に、別の英語の言いかたになっています。
 つまり、
赤(あか)=magenta
青(あお)=cyan
 と、これなら「あ」「a」の音がどちらにもある。
 また、これも音読みなら、
緑(りょく)
黄(おう)
赤(しゃく)
青(せい)
 と、赤の音を合わせることができます。
 ただ、基本的にヨコのもの(英語)は、どんなに頑張ってもうまくタテのもの(日本語)にはならないと思ったほうがいい。