砂手紙のなりゆきブログ

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キャラ萌えイラスト小説の起源(シャーロック・ホームズ)

 活版印刷というものは西洋ではグーテンベルクの時代からあったということになっていますが、活版というのは文字印刷の場合は基本的に「出っ張ったところにインクを乗せて刷る」という凸版印刷で、イラスト(挿絵)はその逆の凹版印刷でした。要するに、文字と絵は基本的に別工程で紙に刷り、本にまとめるときにはそれをまとめて綴じました。つまりまぁ、今のカラーイラストと白黒ページみたいなもんですかね。
 ところが19世紀前半に、大ざっぱに言うと挿絵と文字を同時に凸版印刷で刷る技術が生まれまして、新聞・雑誌などに「イラスト(挿絵)」と「文字」を同時に掲載することができるようになりました。つまり「文字(記事)」に「絵」という情報を、併せて刷れるようになったんですね。イラスト入りのテキストを安価に提供することによって、大衆が事件や物語をヴィジュアル補完で楽しむ方向の娯楽が生まれたわけです。まぁ日本ではもともと、「絵」を補完する形での「字」という絵物語文化はありまして、木版画でどんどん絵+物語が提供されていたわけですが。
 エドガー・アラン・ポーが小説を掲載した雑誌『グレアムズ・マガジン』は、アメリカにおけるその手の成功した初期雑誌の一つであり、シャーロック・ホームズが掲載された雑誌『ストランド・マガジン』は、まぁそれから半世紀ぐらい後ではありますが、挿絵入小説の黄金時代の作品でありました。イラストレイターのシドニー・パジェットは、もっと記憶されてもいいと思う。
 写真をドットの濃淡によって表現する印刷技術は19世紀末に生まれ、新聞のイラストは次第にそれに入れ替わりましたが、虚構としての物語を支えるには、写真という伝達方法は活字物語文化にはあまり向いてなかったようであります。
 ただまぁ、キャラがストーリーより重視されると言ってもいいようになったのは、イラスト入り小説よりも映画の影響が大きいですかね。
 今回はあまり資料とか見てないので、また図書館にでも行って関連資料読みます。