砂手紙のなりゆきブログ

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映画『ジョルスン物語』で不思議なもの(新聞)

 映画『ジョルスン物語』(1946年)は実在する歌手アル・ジョルスン(映画史的には世界初の長編トーキー映画『ジャズ・シンガー』(1927年)で有名です)の伝記映画で、和田誠が生涯でいちばん見た回数が多い映画だって言ってて、本のタイトル『お楽しみはこれからだ』はアル・ジョルスンのセリフから来ているものです。演じている人はラリー・パークスという人で、ハリウッドの赤狩り対象にされちゃって仕事を失い云々とまた別の長い物語がありますが、歌っているところの声はアル・ジョルスンが吹き替えで歌っていて、すばらしくクチパクと合ってます。役者のほうが合わせてるんでしょうけど、すばらしい。
 で、アル・ジョルスンは子供のころからギター弾きの人と旅して、旅先から絵葉書を送って、お母さんはそれを壁に飾って、だいたいこんなところ回ってたんだなぁ、って映画的に観客にわかるようになってます。
 それから、ブロードウェイで成功するよね、そうすると今度はアメリカ全土を興行するぞ、って話になるのよ(ここらへん、ちょっと和田誠の口調混ぜてみました)。今までブロードウェイのスターでそんなことした人いない、ってことで話題になる。映画の中では今度は電車の動画といっしょにお母さんがスクラップブックに貼った新聞の切り抜きを見てるの。確認できた限りの切り抜きの新聞紙名並べるよ? そんなの誰も見たことないですよね。
 バラエティ(ニューヨーク) フィラデルフィアガゼット・ジャーナル シカゴ・レコード カンサス・シティ・タイムズ デモイン・デスパッチ(アイオワ州) リンカーンガゼットネブラスカ州) シャイアン・グローブ・タイムズ(ワイオミング州) スポケーン・センチネル(ワシントン州) シアトル・トランスクリプト・ジャーナル(ワシントン州) デンヴァー・エグサミナー(コロラド州) フォート・ウォース・ブレード(テキサス州ダラス) ニューオーリンズ・レコーダー(ルイジアナ州) メンフィス・スター(テネシー州
 こんな具合です。思ったより大変だった。日付は残念ながら確認できないので史実と照らし合わせるのは無理だけど、たぶん順番とかは合ってるんじゃないかな。
 で、ぼくの疑問は「この新聞の切り抜き、お母さんはどうやって集めたんだろう」ってことです。
 記事の多くというかまぁ全部、「アル・ジョルスン来たる!」みたいな感じの宣伝で、そりゃそうだろう。新聞見て、スターが来るのを知って、みんな話題にする(チケットはもっと前から売ってたと思います)。ブロードウェイの舞台評じゃないんで、見終わったあとの感想が新聞には普通には載らない(小さくは載ると思う)。
 普通に考えると「アル・ジョルスンが当日に新聞を買うか人にもらうかして、母親に送ってる」でいいのかな。地方の興行主に電話して、新聞とっておいてもらうとか。
 母親が直接あちこちの新聞社に電話して送ってもらうってのはないですよね(ジョルスンの両親が住む家には電話がもうあります)。
 映画そのものはおもしろかったので、また見てもいいとは思いましたが、ぼくが生涯でいちばん見た回数が多い映画になるということはない気がします。いまのところ、ぼくのそれは『アニー・ホール』です。

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