砂手紙のなりゆきブログ

KindleDPで本を出しました。Kindleが読めるデバイスで「砂手紙」を検索してください。過去テキストの一覧はこちら→http://d.hatena.ne.jp/sandletter/20120201/p1

それはいつの季節の話?(座頭市)

 たいがいの歴史的事象には、それが何年何月何日に起きたことなのか、という記録が残っています。日本も西洋も、今の暦に当てはめるのは難しいんですが、関ヶ原の戦い、2.26事件、真珠湾攻撃などが何年何月何日なのかははっきりしています。
 ただちょっとややこしいのが「命日」の扱いで、ジョン・レノンの命日は、日本では真珠湾攻撃と同じ日(12月8日)になってますが、日本以外の国ではだいたい違います。これは真珠湾攻撃のほうが悪いのか。
 そういうのを映画にする場合には、撮影の季節と史実の季節をおおよそでも合わせているのか気になりますよね。『八甲田山』を夏に撮るのは無理です。
 でも映画『モーターサイクル・ダイアリーズ』は、南米の1月から7月までという長い季節だし、1950年代はじめの南米なんてくわしくないから、1952年の2月にチリのどこかの山道をバイクでチェ・ゲバラとその友人が通ってたら雪で遭難しそうになった、という映像を見せられてもそんなに気にならない。ちょっと原作を確認したくはなりますけどね。
 困っちゃうのは映画『座頭市物語』で、これ、映画公開は1962年4月で、市が「梅の香りがすらぁ」っていい台詞はいて、植物の具合もやっと冬が終わってぼちぼち春になろうという景色の中で、平手神酒と座頭市が釣りしたりするんです。だけど史実(みたいなもの)としての天保水滸伝、平手造酒が飯岡助五郎と笹川繁蔵の大利根河原の決闘で死ぬのは天保15年(1844年)8月6日。旧暦なので現在に直すと、そろそろ秋も盛りの季節でしょうか。映画撮影と史実(みたいなもの)がずれていても、あまり気にならないですかね。
 ところが続編の『続・座頭市物語』は、平手造酒の一周忌ということで寺に行くことになり、兄の浪人(これは実際に勝新太郎の兄である若山富三郎が、「城健三朗」という芸名で演じています)と決闘するんですが、周りの風景はどうみても夏。夏草ぼうぼうです。
 映画『続・座頭市物語』は1962年10月。座頭市シリーズはけっこうロケ(スタジオ外撮影)を多用しているので、史実(みたいなもの)のあるこの2本の映画はいろいろおかしいです。物語映画になってしまう他の映画は多分特に問題ないんじゃないかな。