TOEICとTOEFLの点数アップをいつも考えてる人におすすめしたい『そして、僕はOEDを読んだ』
アモン・シェイ『そして、僕はOEDを読んだ』は、1年かけて紙のOED(イギリスの有名な英語辞典)を読んだ人の話です。20巻で総ページ数は21730ページ。だいたい1日60ページ読めば1年で読めるみたいで、著者はコーヒーを友に、多分1日も休むことなく毎日10-12時間かけて、読み終えました。
まずOEDが手元に届くところからすばらしいです。「僕はOEDをリビングの壁にそって順番に並べた。本のカバーの色はダーク・ブルーで、威厳のあるキチン質の光沢を放っていて、それはまるで言葉好きの美しい虫の羽を模したかのようだ」ナボコフかよ。
そして、その本を読みながらメモというかノートを取るために、著者が買ったのは19世紀の簿記台帳。「黄色の紙で、500ページあり、大きさは縦40、横25センチと大きめで、重さは2.5キロぐらいだった」まさにバカ。
著者はOEDを読み始める前に、当然何冊か別の辞書を読んでます。最初に読んだのは1934年の『ウェブスター新国際英語辞典』第二版。その後三版も読んでます。蔵書は辞書だけで1000冊。職業は家具運送のサポートって少しだけ出てくるけど、ほぼ無職の30代。猛烈映画化希望です。ベン・スティラーのプロデュースで映画化してくれないかなぁ。日本で『舟を編む』っていう、辞書を作る人の話が映画化されてるんだから、これだって映画になってもおかしくない。
で、彼の友人(ガールフレンドではないみたい)のマデリンは、2万冊の辞書の持ち主で、古今のあらゆる英語辞書について知ってる。外国語に関しては不明だけど、そこらへんがアメリカ人なのかな。
そんな彼の、辞書を読む生活と、辞書に関する無駄知識と、今までに見たことも聞いたこともない単語が載っている、『そして、僕はOEDを読んだ』は今までに読んだ本の中でも面白すぎる謎本でした。
たとえば、「A」の項目で紹介される単語は、こんな感じ。
Abluvion…洗い流される物質や物
Accismus…欲しいものについての本心からではない拒絶、辞退
Acnestis…動物の肩から腰にかけての部分で、かこうと思っても手が届かないところ
なんかこの、Acnestisに相当するもの、絶対日本語(か漢語)にもありそうなんだけど、多分普通の人は使わないし知らないし、調べようとも思わないし、1世紀ぐらい誰も使ってないと思う。映画化されたら字幕の人大変だ。
あと、こんなのとか。本当に無駄知識。
Repertitious…偶然見つかった、ひょんなことから見つかった。このrepertitiousは、同じような意味を表すserendipitousほど成功しなかった言葉だ。後者の名詞形serendipity(幸運な発見)は、作家、ホーレス・ウォルポールによって、1750年代に現在のスリランカを指すSerendipをもとに作られた。
だいたい、人生においてJacobean(ジェイムズ一世時代の)Jacobian(ヤコビ(数学者)の)Jacobin(フランス革命におけるジャコバン党員)Jacobine(ヤコブの子孫)なんて単語を使うことなんてあるのか? 専門家ならともかく。
ぼくが個人的に好きなのはこの単語。
Petrichor…雨が長く降らず、乾燥していたところに雨が降り、その時に地面から上がってくる心地良いにおい。
そんなのが1語で表現できるとは。「日向の猫のにおい」とか「雨に濡れた犬のにおい」とかも、日本語・漢字ではなんかありそうな気になってきた。
なお、エントリーのタイトルはもちろんアイロニーです。
実用英語で「見積もりもう少し検討できませんか」とか「これは我々の望んでいたものとは違います」なんて言えるようになるより、シェイクスピアの戯曲やソネットが英語で読んだらどんだけ素晴らしいか、赤穂浪士の話を要約して英語で伝えられるか、のほうが、ぼくとしては人生楽しいと思うんだけれど、どうなんでしょうか。すごく面白く萱野重実の話とか英語で語れる人ならちょっとお金が入るかもしれない。
このブログはアフィブログではないように今のところしているので、適当に本の題名で検索して、ネット書店とか図書館とかで手に入れて読んでみてください。OEDはアマゾンで10万円ぐらいで紙の本が買えますし(今は少し円高気味なので徐々に高くなっていくかも)、ネットにも存在します。