砂手紙のなりゆきブログ

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寒い映画(八甲田山&ガールズ&パンツァー)

 毎日暑くてヘタります。
 丸谷才一は、あまりにも暑いときには、

思ひかね 妹がりゆけば 冬の夜の 川風寒み 千鳥鳴くなり(紀貫之

 と、寒いときの歌を思い出すといい、なんてことを言ってますが…。まだ暑い。妹ですら暑い。千鳥も暑い。
 他に寒い歌というと、

山里は 冬ぞさびしさ まさりける 人目も草も かれぬと思へば(源宗于朝臣
風寒み 今日もみぞれの ふるさとは 吉野の山の 雪げなりけり(九条良経

 とかどうでしょうか。ネットで探すとまだまだあります。
 映画でおすすめだと、『八甲田山』とか『網走番外地』ですかね。
 『網走番外地』の高倉健さん「何が零下20度だよ。体中ツラだと思えば、ちっとも寒かぁねぇよ」だと思うんですが、和田誠『お楽しみはこれからだ』2巻では「何が零下20度だよ。からだ中つららだと思えば寒かねえよ」となっております。
 この「零下20度」の高倉健のセリフのあと、南原宏治が「あんちゃん、なかなか学のあること言うじゃねぇか」って言うんですけど、「ツラ」と「ツララ」のどっちが学のあることなんでしょうね。
 映画『八甲田山』に関しては、さらに寒くなる見方があります。
 この映画が劇場公開されたのは1977年6月4日なんで、1977年、昭和時代の夏、冷房の効きすぎた二番館・三番館でこの映画を見ることを想像してみてください。さらに、誰もいない映画館で一人で鑑賞。映画の上映時間は169分(2時間49分)。まさに「天は我々を見放した!」と叫びたくなりますね。
 映画『網走番外地』の劇場公開は1965年4月18日です。
 映画『八甲田山』で感心するのは、青森第五連隊が駐屯地を出てから、行軍歌「雪の進軍」を歌いながら行進するところで、ちゃんと歌と足の動きがシンクロしています。どうやって音と行進合わせてるんだろうなぁ。同時撮りってことはないと思うんだけど、先に音撮って、それに合わせて映像のほうを合わせてるとかあるかな。
 それで気になるのは、アニメ『ガールズ&パンツァー』9話では、斥候に出た秋山優花里とエルヴィンが戻ってくるときなどに同じ「雪の進軍」を歌ってますが(『八甲田山と比べるとかなりテンポが早いです)、ここのところのショット、微妙に秋山優花里の歩調と歌とが合ってないんですよね。エルヴィンのほうとは合ってるような気もする…何度も見てるとゆらゆらするんで船酔いみたいな気分になった。OVA5話のほうは、もっとシンクロ度が高いです。アニメの場合も進行的にかなりギリギリということも想定されるんで、声を入れた人がどのような状況下で行なったのか手がかりが欲しいところです。
 あと、暑いときにはいっそ暑苦しい映画とかどうですかね。黒澤明の『天国と地獄』とか『野良犬』とか。ただ『天国と地獄』は1963年3月1日公開なんで、どう考えても寒い時期に撮ってるはずなんだけど、そういうの微塵も感じさせませんね。
 あの有名な、特急こだま借りきって、酒匂川の鉄橋の近くの家の屋根とっぱらっての撮影は、1963年10月22日、東京駅を10時少し過ぎに出発した列車で行われました。映画の中の時間では、14時半東京駅発で、酒匂川は15時半ごろ通過ということになってるので(ビュッフェの時計もそれに合わせています)、光源とかちゃんと確認すると午前・午後の違いは見分けられるかもしれません。「慰安旅行じゃないんだぜ」と言って起こされる刑事の腕時計のほうではさっぱりわかりません。