砂手紙のなりゆきブログ

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なぜ映画『ゴジラ』(1954)はこわくて、『パシフィック・リム』(2013)はそんなにこわくないか

 ところでみなさんはゴジラがどちらを向いて大あばれするか覚えてますか。
 ゴジラの出てくるショット順にあげてみます。

1・大戸島の八幡山の稜線から顔を出す。顔は右向き。
2・船の上でダンスしている人たちの前に出てくる。右向きから背中。
3・東京湾ゴジラ出現。顔は右向き。攻撃している側も「左側」から銃を撃ったりしてるんで見ている側が混乱する。
4・品川近辺に上陸。右から左に移動して列車襲う。背中見せて帰る。
5・京浜芝浦地区に再上陸。右向いてて、高圧電線こわす。左から自衛隊(当時できたて)が攻撃する。
6・その後つづいて町の中を右から左にあるく。人々は左のほうへ逃げる。放射能といわれているけどじつは「放射能を帯びた白熱光」を吐いて町中が火の海。戦車左のほうから出てきて砲撃。
7・松坂屋とか服部時計店とか、銀座の名物をどんどん「右から左」に移動してこわす。数寄屋橋方面に向かうのを放送しているのも、NHK(内幸町)からなんで、ずっとゴジラは「右から左」に移動。
8・勝鬨橋とかこわして、ときどき正面向きになるけど、原則として左の方向に移動するゴジラ。そこへジェット機が「右から左」に登場。ゴジラを背後から攻撃する。ゴジラいったん逃げる。
9・海中のゴジラ。左側にいる芹澤博士に右側からせまる。

 おわかりのとおり、ゴジラがうごく方向は「それを見ている人間」の視点が意識された演出になっています。銀座ではそれを報道するアナウンサーの視点、勝鬨橋ではそれを見ている川ぞいの群衆、など。
 その視点の中で怪獣が「右から左」に移動するのは意味があるんですね。
 映画『パシフィック・リム』は、『ゴジラ』の映画監督・本多猪四郎(ほんだいしろう)に捧ぐ、と最後にメッセージが出るぐらいのリスペクト映画で、海底からあらわれて人間を攻撃する巨大生物が「カイジュウ」と呼ばれ、それと戦う巨大ロボット「イェーガー」が出てくる話です。
 このカイジュウの巨大感と「右から左」へカイジュウが出てきてあばれるところはおもしろいんしすごいんですが、見ててこわい、という気に今ひとつならないのは、見ている(見あげながら逃げている)人たちの視点がやや不足してるせいなのかな、とか思いました。
 それではこれは「怪獣」映画ではなく「特撮」映画かというと、またそれも日本人の考える様式とはすこしずれてるところがあります。それについてはまた後日。