砂手紙のなりゆきブログ

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ウルトラマン映画としての『パシフィック・リム』のおかしなところと、『新世紀エヴァンゲリオン』のちゃんとやってるところ

 映画『パシフィック・リム』は、主人公たちが乗る巨大ロボット「イェーガー」が画面の左に大きく描かれ、戦う相手の「カイジュウ」が画面の右に描かれる絵が有名です。
 また冒頭の、サンフランシスコのゴールデンゲートブリッジをこわすカイジュウは、画面の右からその橋をこわします。
 …これ、なにかおかしくないですかね?
 ふつう、ウルトラマンは画面の右側に立ち、左側にいる怪獣と戦って、戦っているうちに左右の関係はくずれますが、最後にスペシウム光線を出すところは「画面の右」でやることが多いようです(全部は確認してませんが)。映像の使い回し(バンク)の関係もありますですかね。
 そして、日本の怪獣・ゴジラが「画面の右から左」にうごいて攻撃をするのには、ちゃんと意味があります。
 サンフランシスコの橋は南北にかかっており、これを「右から攻撃」する絵にしちゃうとちょっと視聴者が混乱しちゃいます。つまり「東から西」に攻撃する絵に見えちゃうんですよね。地図による地理感覚からすると「北が上」、つまり「北が画面の奥」という認識を、つい北半球の人間はやってしまうんです。むずかしいですね。
 右から攻撃するのは、アメリカの東海岸にある橋とか都市なんじゃないかな。
 で、『パシフィック・リム』の冒頭で、主人公たちは「左から右」に動いてイェーガーに乗り込み、乗り込むときのイェーガー(ジプシー・デンジャー)は、発進するまえは「右肩を手前にして、半分正面を向いたポーズ」で描かれます。
 ここらへんの展開は、ものすごく『新世紀エヴァンゲリオン』の「エヴァンゲリオン、発進!」のシーンを思わせます。
 ところがですね、庵野秀明監督は「発進」のシーンを「画面の右」にこっそり変えてます(こっそりじゃないけど)。
 それで、エヴァが戦うときはだいたい「画面の右」に立って、左のほうの使徒を見ながら戦います。テレビ放映版の第1話、覚えてますよね。あっ、これはウルトラマンだなって。ウルトラマンが「画面の左」のほうにいて戦う場合は、ゼットンの例でもお分かりの通り、やられます。エヴァンゲリオンでも対ゼルエル戦ではアスカが頭おかしくなってボロ負けします。
 だもんで、『パシフィック・リム』見てると、どう考えてもイェーガーがカイジュウに勝てる気がしないというのが困ります。あと、映画館の観客は飲み物を「右側に置く」という関係で、座席を「画面の右」から見る人が多くなる(気がする)んで、なんかカイジュウのほうに「がんばれ!」って応援したくなる気になったりしないですかね。
 この、基本的に「敵は左、ヒーローは右」という法則はどうして生まれたのか、についてはまた後日。
 その法則・原則について語っていたのは富野由悠季ですが、また意図的にくずしたアニメとして記憶に残るのは同じ監督の『OVERMANキングゲイナー』と、新房昭之監督の『魔法少女まどか☆マギカ』です。これについてもまた後日。

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