砂手紙のなりゆきブログ

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伊福部昭の偽装記憶と「宇宙大戦争マーチ」(吉志舞)

 伊福部昭自身が自分の映画音楽について語っている『伊福部昭語る-伊福部昭映画音楽回顧録-』という本を読みました。
 この中で語られていることと、ウィキペディアその他で書かれていることの記述が違ってるのはどうなってるんですかね。
 伊福部昭が木製飛行機の研究でレントゲン浴びすぎて放射線障害で入院することになった(本人談)とか、マッカーサーが厚木で飛行機から降りて来るときに日本の軍楽隊が彼の「吉志舞」を演奏した(本人談)とか。前者は放射線障害と確認されていないし(当時のカルテ見ないとわからないし、見ても今の医学的知識と違うからわからないんじゃないかな)、後者はラジオで放送したかもしれないけど当時の演奏記録では公式に流れていないということらしいです。
 ただこの「吉志舞」の第二主題は非常に有名で、たいていの人は「宇宙大戦争マーチ」とかで地球防衛軍とか自衛隊が出てくるときに使われている音楽として知っています。大戦中は海軍関係の節日に流されたって書いてあったけど本当ですかね。伊福部昭自身は再軍備に反対していたかどうかはさっぱりわからない。
 伊福部昭の映画音楽における同じ主題の使い回しとしては、「ゴジラがまた来るぞ」で有名になったゴジラの曲は、最初は柳家金語楼の出てくる軽妙な喜劇映画『社長と女店員』(1948年)に使われたものだとか、『空の大怪獣ラドン』(1956年)では伊福部昭・谷口千吉・三船敏郎それぞれのデビュー作『銀嶺の果て』(1947年)に使われたものだったりします。
 伊福部昭は、谷口千吉および勝新太郎とは非常に相性がよかったようですが、黒澤明岡本喜八とはどうもうまく行かなかったようです。座頭市なんかは「またいつものボレロで」とか言われて、特に細かい注文はなかったみたい。
 ぼくがいちばん好きな伊福部昭の映画音楽は、アニメ『わんぱく王子の大蛇退治』です。