砂手紙のなりゆきブログ

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1980年代はじめの神戸市立図書館で誰にも読まれなかった作家

 『本をどう選ぶか 公立図書館の蔵書構成』(伊藤昭治・山本昭和編著、日本図書館研究会、1992年)という、著者名からして昭和な時代の本を斜め読みしました。日本図書館研究会は一般的に知られている日本図書館協会とはまた別の団体で、1946年1月に作られた学術団体です。1953年6月に作られた日本図書館情報学会というのもあります。お互いに扱っている分野は重なってたり違ってたりするようです。
 この本の中には「開架資料はどのように利用されるか」という章があり、1980年10月に新館オープンしたした神戸市立図書館の開架蔵書20万冊(当時)のうち、1982年末までの2年2か月の間に利用された図書15万1413冊の分析がされています。「一冊も読まれなかった分類」とか面白いんですが、小説では「貸出回数0の図書の著者名一覧」というのがあって、これが興味深いです。資料には「日本書籍総目録1983年版による出版されている著作数」というのがあるんですが、まぁそういうのは国会図書館サーチで補完できるので省略して、名前だけ全部貼っておきます。

秋津漂/阿久根宏夫/内山幸夫/今北英夫/古賀孝之/斉藤喜久夫/狭山温/滝沢学/辻勝三郎/不二今日子/小沢冬雄/阿嘉誠一郎/石上玄一郎/竹俣高敏/島本久恵/窪川鶴次郎/保高徳蔵/山田夢川/吉田政吉/米村晃太郎/火野摂/島比呂志/田崎暘之助/殿谷みな子/戸田純/中村昌義/那須国男/福沢英敏/夫馬基彦/本田元弥/松浦豊敏/三浦真彦/三木一郎/ヤマキシゲル/黒羽英二/千田三四郎/柘植光彦東峰夫/堀澤光儀/光岡明/山田多賀市/佐々木博子/平田敬/川俣晃自/川元祥一/斎木寿夫/堀尾幸平/矢島輝夫/岩田宏/薄井清/工藤正広/小牧近江/近藤良夫/佐藤善一/清水蓼人/武田勝彦/罷野咲人/中江俊夫/中谷孝雄/長谷川修/花田春兆/平井信作/平木国夫/丸本淑生/宮崎忠尚/村上義人/結城信一

 さてあなたは何人知っていますか。殿谷みな子ぐらいかな。東峰夫なんて1971年に芥川賞取ってるのに10年後には誰も読まない。
 30年以上前に読まれなかった作家の作品が今読まれるわけがないので、たいていの市町村立レベルの図書館にはありません。
 秋津漂で検索すると、1979年刊行の『歪められた紙片』というのがあるらしい。保存している図書館は国会図書館を含めて日本で4館しかない。内容はさっぱりわからないけど、ミステリーだったら多分日下三蔵が持ってるだろう。
 この中で当時一番著作の多かった武田勝彦は英文学・英文法の人で、日本文学の評論も出していますが、小説と言えるようなのは『富士ふたつ』だけですかね。
 岩田宏小笠原豊樹)は詩人・翻訳者として有名ですが、1970年代後半から80年代にかけて小説も書いていたようです。