対話しているふたりを撮る4つの方法(蒼き鋼のアルペジオ)
対話しているふたりの人物を撮るには4つの方法があります。
1・話している人物を主に撮る
その場合は、その人物だけを撮る・聞いている人物を肩ごしに併せて撮る(話している人物が奥で、聞いている人物が手前)・ふたりとも正面を向かせて並べて撮る・ふたりとも正面を向かせるが奥行きを出して撮る・背中合わせで撮る(聞いている人物は背中)、などがあります。
2・聞いている人物を主に撮る
これも1と似たようなものですが、「その人物(聞いている人物)だけを撮る」という場合は、相手の声が映画のフレーム外から聞こえることに、映画を見ている人にはなります。
3・両方の人物を同じバランスで撮る
カメラを向き合っている人物の真横に置いて、喫茶店とかで話しているところを撮る。背中合わせでも撮れる。
4・どちらも撮らない
カメラは話している人物とは関係がないものを撮る。
たいていの映画やアニメはこの4つの方法の組み合わせで撮り、アニメの場合は演出、映画の場合は編集、という技術になるんじゃないかと思います。
たとえば、「Aが話しているところ」から、セリフを切らないで「Bがそれを聞いて自分の感情をあらわしているところ」になり、逆光気味にして「AとBが向き合っている(同じバランスの)ところ」になるショットのつなぎ、なんてのは実にしばしば映画では見ることがあります。絵による感情表現は実写よりもくっきりするので、アニメのほうが「聞いている人物」の感情を出しやすい印象がありますね。
アニメ『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』(2013年)は、「霧の艦隊」という謎の敵によって海が制覇されている未来を舞台にした、兵器(軍艦)なのに、ていうか軍艦だから女の子の体(メンタルモデル)を持っている潜水艦イ401(イオナ)とその仲間たちの物語で、ものすごい火力戦が楽しいんですが、漫画では艦同士がテレパシーのようなもので会話するところが、アニメでは「概念伝達」の場であるお茶会空間として描かれ、戦闘中でも意見を交わし合うことが可能です。そこでは「会話の演出」以外の情報は極めて少ないので、アニメの研究、とまではいかないにしても、アニメの演出に興味を持っている人は面白く見られるかもしれません。
このシーンはラスボスである戦艦コンゴウとイオナが会話をするところですが、コンゴウをフレーム外に置き、空間を効果的に切り取っていて、ええっ? と思いました。アニメは映画みたいな漫画じゃなくて漫画みたいな映画(より映画に近い)なんだなあ、とか。