追悼・石上三登志(地球のための紳士録)
本棚から拾って読み始めた石上三登志『地球のための紳士録』がたまらなく面白かったです。
なにしろ、最初が「オーソン・ウェルズ」で、次が「ウィリアム・アランド」、そこから「ジャック・アーノルド」に行くB級映画と映画製作者(プロデューサー)に対するこだわり言及がすばらしいです。
ウィリアム・アランドは『大アマゾンの半魚人』『宇宙水爆戦』といった、心に残る1950年代映画のプロデューサーで、ジャック・アーノルドと2人で『若さでブッ飛ばせ!』というB級青春映画も作ってるようですが、そういうの誰も見たことないし、話にも取り上げない。双葉十三郎さんは多分全部見ていて、400字ぐらいで書いてると思うけど、この人はちょっと例外。
映画と小説の、通俗スレスレの話(もっぱらミステリーとSF)に関しては詳しいんだけれど、音楽関係の情報がちょっと遺漏が激しいですかね。そういうものに関する情報には、多分興味がなかったんだろうな。映画ほどには1980年代にはその手の情報は出回ってなかったということもあるのかもしれない。あと、手塚治虫以外のアニメの話もそんなにない。
残念なのは、この本の刊行が1980年なんで、それから30年以上の人物(紳士録)が抜け落ちてしまっていることです。和田誠『お楽しみはこれからだ!』もそうなんだけど、昔の古い本って「まだ続きが出せるだろう」と思うの多いです。俺がやるか。
あと、若い時に読んだ本格ミステリーを中心に再読して、今の感想と分析がついている『名探偵たちのユートピア 黄金期・探偵小説の役割』(東京創元社)も滅茶苦茶面白いです。これだけ面白い本格ミステリーの作家・作品に関する本なんて読んだことなかった。もう「探偵小説論」とか、論文・考察・世界観提示的な本にうんざりしている人におすすめ。
石上三登志さんが亡くなったのは2012年11月6日でした。