ジェイムズ・サーバーの短編集『虹をつかむ男』を読んだら最後のふたつの話だけ妙におもしろかった
映画『LIFE!』の公開にあわせて、だと思うけど、早川書房から『虹をつかむ男』が文庫になって出ていたので読みました。映画のほうはビデオになってから見よう。
むかし読んだ記憶はあるんだけど、すっかり話をわすれていたうえ、どうもサーバーの翻訳は「英語で読めるともっとおもしろいですよ、ふふふ」と耳もとでささやかれているような翻訳でもどかしい。たぶん英語で読んでもわからないところはわからない。
なにしろもう半世紀以上まえに死んだひとなので、日本の獅子文六や源氏鶏太のユーモア小説がいま読んでもおもしろいかというと、それはどうかな、とか思うだろう。
ちなみにぼくの語学力はアシモフぐらいならなんとか読めるけど、ハインラインは長いのはもうヘトヘトで、日本語で読んでもさっぱりわからない現代英米SFはとても無理です。
ということで、なんかオチがあるのかないのかわからない、そのためむかしのオチSF・ミステリーみたいに傑作・愚作だかはっきりしている小説みたいには読めない短編集だったんだけど、最後のほうに載ってる「ホテル・メトロポール午前二時」は異様に印象に残る短編だった。
これは昔起こった実際の事件っぽいもの(ホテルでのギャンブラー殺し)を、人物像を明確にして、それに関係した人物がその後どうなったか、という話を器用にまとめていて、自分の体験っぽいものをふくらませたサーバーっぽい芸風とはちょっとちがってるんですね。立ち読みするならこれと表題作と一番最後の「一種の天才」を読むといいんじゃないかな。
しかしその芸風、考えてみたらフェルディナント・フォン・シーラッハの芸とほとんど同じなんで、むしろ翻訳が出ている彼の作品3冊を読んだほうがいいかもしれないです。