砂手紙のなりゆきブログ

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映画は映画館で見ないと渋い顔をされた20世紀末(映画の本の本)

 重政隆文『映画の本の本』(松本工房、2002年)というとても面白い本を読みました。
 これは当時手に入れることができた映画関係の鑑賞・批評本に関してときどきかなり批判的に紹介しているメタ映画本です。
 彼の主張は「映画は金出して映画館で見ろ」ということで、ビデオや試写会でしか映画を見ていない(と思われる)人に関してははなはだ厳しい指摘をしています。
 椎名誠『ガリコン式映写装置』(1994年、本の雑誌社)に関してはこんな感じ。

『彼は映画の本をすでに二冊出していて、この本は三冊目にあたる。全部読んでみて思うのだが、確かにこの人は映画に対して強い愛情を持っている。しかし致命的なことに映画的教養が乏しいのではないかという疑念が湧く。映画が大好きというわりにほとんど映画館に映画を見にいっていないように思える。しばしばある例だ。大学などで映画製作を勉強している学生にかぎって映画を見ない。映画を作ることには熱心でも見ることには不熱心なのである。その結果、映画の常識をほとんど知らない。作ることがあまりに楽しいため見る喜び(あるいは悲しみ)を知る暇がない。』

 ということで、椎名誠の映画に関する知識(映画のスクリーンサイズなど)を批判的に指摘した上で、こんなことを書いてます。

『彼の周りに苦言を呈する人は一人もいないのだろう。この本を読むと彼の周辺にいる映画関係者が頼りないのが分かる。『ダーク・クリスタル』(1982年、ジム・ヘンソンフランク・オズ監督)が話題になって、それを探そうとし彼がしたことはこうだ。「ビデオレンタル屋の情報通を皮切りにSFマニア、VTR映画収集家、映画雑誌編集者などいろいろあたったがみんな知らない、というのだ」(233ページ)。およそ映画館で映画を見ない人しか彼の知り合いにはいないようである。私はこの映画を映画館で見ているが、念のため『ぴあシネマクラブ2・外国映画編2001→2002』(2001年4月、ぴあ)を調べると正しく載っている。彼の知人たちは基本的な調べ事もできない。いや、それ以前に、椎名誠は事典を調べるのが嫌いらしい。』

 …すみません、ぼくも『ダーク・クリスタル』はビデオでしか見てません。
 だいたいぼくの映画生活はビデオです。なぜかというと、
1・アメリカの最近のコメディ映画はだいたい日本では劇場公開されない(ビデオでしか見られない)
2・ウィキペディアを確認しながらでないと笑いどころがわからない(実際にアメリカで暮らしている人じゃないと細部がわからないネタ多すぎ)
3・日本語字幕だと情報量少なすぎだし、吹き替えだけだとアメリカの映画見てる気にならないし、英語だけだと何言ってるのかわからない(英語字幕&日本語吹き替えで見るという邪道なことしょっちゅうやってます。日本映画だって字幕つきならそれで見る)
4・面白そうな映画はだいたい劇場公開が終わったころに情報入ってくる(情報弱者です)
 まだまだ理由はあるんですが(今映画館でやっている映画で面白そうなのがないとか。いやそんなことはないですけどね、ははは)、やはり20世紀末と21世紀では、映画の鑑賞方法がずいぶん変わったもんだと思います。
 重政隆文は「15・笑えないアメリカン・コメディ」という章を立て、高平哲郎スタンダップ・コメディの研究』(1994年、晶文社)をダシに、こんなことを書いてます。

『たくさんあるアメリカのコメディ映画の中で全然面白くない場合の多いのがアメリカのテレビ番組「サタデー・ナイト・ライブ」出身者出演のものである。』

 そりゃそうだよな。これを元ネタにした日本のテレビ番組『俺たちひょうきん族』(エンディングのEPOの曲を聞けば誰だって元ネタがわかる)も外人には多分全然面白くないと思う。映画『ロクスベリー・ナイト・フィーバー』は山田邦子西川のりおのコントの外人版みたいなもので、日本人には全然面白くない。
 えーと、何の話だったかな。
 とりあえず重政隆文『映画の本の本』、どこかで見つけたら読んでみてください。