砂手紙のなりゆきブログ

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リハーサルをする人としない人(黒澤明とウディ・アレン)

 ウディ・アレン監督はリハーサルをしない人で有名でした。
 そのかわり、現場で面白いと思ったものはどんどん入れて、つまらないと思ったものは容赦なくカットする。自分が出ているショットでもがんがん削る。『カメレオン・マン』(1983年)の場合は削りすぎて60分ぐらいになっちゃったのであわてて編集しなおした。
 映画製作で一番地味でつらくて、そんなの必要なの? という業務が編集作業のように思われている気がしますが、ほとんど編集作業だけで5年かけた小林正樹の『東京裁判』(1983年)見て驚け。
 監督によっては12時間ぐらいフィルムを撮ったら編集の人に渡しちゃう。監督はその後ゴルフや旅行に行って(役者は別の仕事してたり、先にバカンスしてたりする)、苦労して2時間半にしたらプロデューサーに「あと30分削れ」と言われる、それが編集の人。アナログ時代は編集室の壁に数百枚の断片フィルムを並べて、どこにどのシーンがあるかを記憶している、それが編集の人。
 ウディ・アレンは脚本から編集まで(役者業・監督業も含めて)全部やるので、1年のはじめにシナリオを書きはじめて、春ぐらいに役者決めて、初夏ぐらいにロケハンやって、実際に撮影するのは秋だからいつも映画の中は秋。小津安二郎と同じです。
 映画を撮るには普通、段取り(リハーサル)・テスト・本番と、3回同じことしないといけないんだけど、ウディ・アレンとは逆に黒澤明は、リハーサルばかりやって本番は1回しかやらない人で有名でした。あれは多分絵(画家)が最初の仕事だったからなんだろうな。重ね塗りして最後に1枚の絵にする。ウディ・アレンはご存知の通り舞台が最初の仕事の人でした。
 クリント・イーストウッドは役者時代に、監督の意味不明な撮り直し要求に頭に来ていたので、自分の監督作品はさっさと撮ることにしていたようです。せっせと撮って、編集のジョエル・コックスにフィルム渡す。