砂手紙のなりゆきブログ

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酒を飲む人(Fate/Zero)

 伊丹十三がヨーロッパで退屈しながら読んだらしい子母沢寛の『味覚極楽』。これは子母沢寛が記者として三十余名の食べ物に関する聞き書きとその覚書をまとめたもんなんだけど、読み始めて感じてた違和感が途中で腑に落ちた。
 子母沢寛さんってお酒飲まない人だったんですよ。道理で酒の肴とか、人肌の酒なんて話が、せんべいとかおでんの話より盛り上がって書かれていないわけだ。
 食べ物関係の随筆は、まず、酒を飲む・飲まないというのを横軸にして、これに料理を自分で作る・作らないというのを縦軸にする。その四分割の中では「酒を飲んで自分も料理する」って人の話が一番面白いんですね。
 伊丹十三とか荻昌弘がまぁ代表的な人。丸谷才一とか吉田健一は飲むけど料理は作らないんじゃないかな。
 吉田健一の食い物の話はほとんどが酒の肴で、おまけに素面では何が書いてあるのかよくわからないもんだから、酒を飲みながら読み始めるとさらにわからなくなる。きっと酒飲みながら書いてるんでしょうね。
 丸谷才一は二日酔いでうなりながら書いて、もう今夜は飲まないぞ、と思いながら、1本仕上げたら外に飲みに行く。
 子母沢寛みたいに、あの時代の人で全然飲めないっていうのも珍しい気がしますが、ぼくもアルコール類は、若いときはともかく今はさっぱりなんでどうにも困る。
 小説の中に会社勤めやゴルフなどの、妙に中途半端な描写があったりすると、その人は多分社会人としての生活をあまり知らないんじゃないかと思ったりしますよね。たとえば最近の映画だと、『舟を編む』に出てきた出版社の営業部。
 あの時代は今より少し前なんで、今よりもっと、圧倒的に「電話での書店・取次との応対」が入ってないとおかしいですよね。ていうか、出版社の営業の仕事の大半は電話でのやりとり(残りはいろいろなところ歩きまわる)なのに、なんであんなに他の音でうるさいの?
 話を元に少しだけ戻すと、「体験してないことを書くのは難しい、というかほとんど無理かも」ということで、銃は実弾撃ってみたほうがいいし、自動車は運転できたほうがいいし、戦車は機会があったら乗ったほうがいい。
 スポーツ関係も、ボクシング、陸上、その他球技など、基本からはじまって2合目ぐらいまでは「そのスポーツがうまくなるには、どういうことが必要なのか」を知るためにやっておいたほうがいいんじゃないですかね。
 別に飲めない酒を飲む必要はないんだけれど、アニメ『Fate/Zero』で酒飲むシーンが出てくるのは、やはり原作の人が酒飲めないと書けないですね。あと、タバコとか。
 関係ないけど、マイクル・クライトンって作家いるじゃないですか。この人の初期作品見てたら(学校が休みのときに3週間ぐらいで書いたペーパーバックの翻訳です)、タバコ吸ってるんだよね、登場人物が。多分マイクル・クライトンも当時は吸ってたんだろうけど、いつごろやめたのかちょっと興味持った。