砂手紙のなりゆきブログ

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物語を作る人として映画を見ている『荒木飛呂彦の超偏愛!映画の掟』と映画『ヒート』についての微妙な話

 集英社新書で出ている『荒木飛呂彦の超偏愛!映画の掟』(2013年)は、サスペンス映画に限定して著者が熱く語っている本ですが、こんなにすぐに読めて面白くて、おまけに勉強にもなる映画の本というのは久しぶりでした。『前田敦子の映画手帖』(2015年)以来。
 これはこんな映画で、こんな風に面白いんですよ、と、おまけにサスペンス映画なので微妙にネタバレを回避しながら、要約と見どころと、さらに自分の創作に与えた影響まで書いてくれてるんで、参考になりすぎて困る。おまけに荒木飛呂彦が「何度も見ました」という映画で、ぼくが全然見たこともない映画が山のようにある(まあそれに関してはぼくの勉強不足です)。
 しかし、中に掲載されている「著者が映画を分析したノート」の写真がものすごく興味ある。「トップ・シークレット」って表紙に書いてあるノートなんで、公開なんてまずされないだろうな。
 で、著者がもっともプッシュしていて、冒頭のリスト「荒木飛呂彦が選ぶサスペンス映画ベスト20」でもトップになっているのが『ヒート』(1995年)。
 …なんか昔見た記憶があるんだけど、いろいろ見た最近のサスペンス映画、というよりチームで悪いことする映画のせいでどうも強く記憶に残ってない。
 気になるのは、その紹介の中での荒木飛呂彦の記述です。P36

『(映画の紹介をしたあとで)これは強盗団の世界に限った話ではなく、僕らの社会や仕事においても十分ありうることです。プロジェクトの誰かの能力が非常に低くて、クビにしたいんだけれど、雇ってしまったし人数も足りないし、とりあえず今は残ってもらわなければ困るというような状態。文句をいろいろと垂れたくても、そんなヒマがあったら前へと進まなくてはいけない。そんな状況に共感できるから、実にやるせないんです。』

 ひとつの漫画家チームのリーダーである著者のことを考えると、実にしみじみしてしまいます。
 ロバート・デ・ニーロ荒木飛呂彦なら、アル・パチーノが編集者かしらん。

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