砂手紙のなりゆきブログ

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隣の席の知らない人(男子高校生の日常)

 隣の席に知らない人が座る。映画館に1人で行けば両側は知らない人だし、2人で行けば片側は知らない人だ。3人とか4人で行っても片側が知らない人の可能性はある。電車でも同じ。両側が知っている人がいるのは、多分行きつけの飲み屋がある人。
 こないだ電車に座ってたら、やはり両側に知らない人が座った。なんでそうなるかというと、片側が壁というか、仕切りのドア付近に座るの嫌なんですよ。嫌じゃないですか、ドア付近に立ってる人が長髪で、髪の毛が顔こすったり。だから一番右とか左じゃなくて、右からもしくは左から2番めに座る。でもそうすると両側が知らない人になる。
 ところが、そのときの両側の人は、ぼくが知らない人でも、お互いが知ってる人だった。ああうざい(ぼくが)。ぼくの存在無視して話をはじめる。しかもそれが、近所の婆さんの話とか職場のグチじゃなくって、ぼくもこの間見た映画の話だった。それに監督の名前思い出せないんだよ一人が。もう一人は思い出したのはいいんだけど、今度はその監督の前の作品思い出そうとしてる。あれだよあれ。なんでそんなの出てこないのよ。お前ら年に12回、トーホーシネマの日しか映画見てないだろ。
 混ざりたい。すげぇ話に混ざりたい。
 でもこういうとき、どう言えばいいんだろう。さりげなく「ちょっといいですか」とか、「その話なんですが」とかダメかな。しかし考えてみたらぼくも、その監督の前の作品の主演女優が思い出せない。ここまで出かかってるのに。そうだ、ウィキペディアで検索して、黙ってその画面を見せてやればいいんだ。『デュラララ!!』のセルティさんか。ところが地下鉄でスマホの接続が悪い。そんなことしてる間に、ぼくが目的地に着いてしまいそうだ。
 そりゃぼくもいつもなら、席が隣同士になるよう譲りますよ二人に。でもそのときは、とても疲れて電車も混んできてたんです。席立ったら別の人に座られて、ぼくが立ったままになっちゃう。眠らせてくれよもう。人が思い出せないことを知ってるのに話せないのはストレスたまる。自分が思い出せないことでストレスさらに倍。ていうか、お前らが検索しろよ、そんなにどうでもいい映画なのかそれは。記憶だけで話していいのは小学生までだよ。
 …今回のテキストは、アニメ『男子高校生の日常』のヒデノリ(杉田智和)をイメージしてお読みください。